イェミくんの場合

アフリカ某国出身のイェミくん(仮名)という知り合いがいる。
彼は黒人なのだけど、ものすごい白人コンプレックスを抱えている。
日本の女の子はみんな白人が好きだと思い込んでるし、また白人の男性は日本の女はやらせてくれる相手だという認識しかもってないと言い張る。
それはまああんまり賛同しかねるんだけど、会う度に説き伏せられてしまうと、誤解だよとも切り出せない状況ができあがってしまっていて。


イェミくんはまるで、被害妄想バリバリの根暗人みたいなのである。
趣味はない、仕事から帰ってテレビも見ない、ネットもしない、友達もいない。
そんな生活をしてる。そしてなんにつけてもマイナス思考ときてる。
それでも普通に生活できてるみたいだから私なんかが心配するこっちゃないのだろうけど。
あ、日本人の奥様いるけどね、デフォルト喧嘩の日々みたい。たまに仲裁に入るものの、イェミくんの被害妄想の壁を崩すのにはとうていわたくしなんどでは役立たずっす。


失礼な話だけど、アフリカ系黒人さんってのはみんなみんなノリがいいんだと思い込んでた。
鬱々した黒人さんってのは皆無なんだと、飲み屋やクラブに行くたびに感じていたんだけど、ただそういう場所に集う人たちが明るかっただけなんだと、今更ながらに己の認識度の甘さに辟易した。
私は映画やドラマの見過ぎなだけだろうか。
目が合えばスマイルを交わし、気が合えば話に花が咲く。陽気で、縦ノリで、自己アピールが多く、白い歯がまぶしい。
そんなステレオタイプに描かれる黒人さん像しか、知らなかった。
だからイェミくんはとても例外だった。


彼の育った国では「鬱」という概念がないらしい。
ないのなら、かかるわけがないのである。ゼロなものにはなれない法則だ。
だから彼は自分のことを絶対に鬱っぽいとは認めない。イェミくんにはそれが普通な状態なだけなのだから。